はじめに
スーパーソースフォロアはMOS-FETのインバーテッド・ダーリントン接続で、ドライブ段の電流を定電流回路で与えたような回路です。
これによって極めて強力な局所帰還がかかり、低出力インピーダンス・低歪・広帯域が得られます。
このスーパーソースフォロアをシミュレーションします。
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シミュレーション
左はただのダーリントン、右がスーパーソースフォロアです。どちらもアイドリング電流1AのA級シングルアンプとしています。
まずAC特性を見ます。
緑がダーリントン、青がスーパーソースフォロアです。やたら広帯域に見えますが、これは負帰還の作用によって得られた偽りの広帯域性であることに注意してください。また、AC解析では無視されていますが、実際には定電流に10mAしか流していないので、大振幅で10MHzまで出力できる訳ではありません。
スーパーソースフォロアのオープンループ特性も見ておきましょう。これは全帰還の電流帰還アンプなので、
でゲインを計算できるはずです。
理想定電流なのとデフォルトの2N7002のモデルが怪しいせいで、超低域まで-6dB/octのカーブが続いており、直流利得はよくわかりません。実機では80dBも行かないと思いますが……。それにしてもGB積10MHzは凄いですね。
ちなみに、この回路は一段目(ドライブ段)の100Ωを調整してオープンループゲインを増減させることができます。抵抗一つでそれなりに自由に設計できると言って良いでしょう。また、二段目(終段)のゲート・ソース間容量にミラー効果がかかったものが補償容量になります。
1kHz、最大値4Vの正弦波を入力して、歪みをFFTで見ます。8Ω負荷なので、概ね1Wくらいの出力のときの歪み方だと思ってください。
まずダーリントンの方。
スーパーソースフォロア。
強力な負帰還のおかげで、二次・三次高調波は-100dB以下です。素晴らしいと言って良いでしょう。
このように優秀なスーパーソースフォロアですが、実機には採用しづらい理由が幾つもあります。
- 深い帰還のため、実際に組むと高周波で挙動不審になりそう
- 定電流に縛られるせいでスルーレートが稼げない。TIM歪みも発生する
- アイドリング電流が下側定電流に引き込まれて初めて決定する仕組み。そのままSEPPにするとアイドリング電流が不定になり、動作しない。対処するには工夫が必要
1番目の懸念は慎重にやればなんとかなると思いますが、2番目と3番目はこの回路のままではどうしようもありません。工夫が必要です。
個人的に、それなりのアイデアは温めているので、そのうちアイデアが熟したら書いてみようと思います。