はじめに
フィードフォワードは歪み打ち消し技術の一種です。
この記事はラムダコンさんのページを参考にしています。
http://www.geocities.jp/mutsu562000/root/garden/htm/hp3733.htm
スポンサーリンク
検討
次のような回路を考えます。
SEPPのソースフォロアが本体です。バイアスを低めに設定して、C級動作に設定しています。オペアンプは差動増幅回路を構成しており、C級フォロアの入出力間電位を1倍して出力します。
正弦波を入れて過渡解析を見てみます。
V(o)が出力波形で、かなりクロスオーバー歪みが出て歪んでいることがわかります。V(n011)がオペアンプの出力です。
次のように接続し直します。
Add Trace→Expressionで負荷抵抗の両端電圧を見ても良いのですが、負荷電流を見た方が簡単です。
波形はまともに見えます。FFTを見ると、まあ高調波が-100dBくらいで残っているといえば残っているのですが、それでもかなり打ち消されているであろうことはわかります。
というのがフィードフォワードの効果で、原理としては誤差信号を出力に逆相で加算しているだけです。うまく行けば歪みを0にできます。
理想ではない
こうして見ると素晴らしい効果があるようにも思えますが、
- シミュレーションでは補正アンプに理想オペアンプを使っているが、現実にはこちらにも不完全なアンプを使わざるを得ない
特に補正アンプの出力インピーダンスに起因する歪みに関してはフィードフォワードは無力
- そもそも誤差信号を正確に作れるかが疑問。歪率0.1%を補正するには同じくらいの精度が要求される訳で、一筋縄ではいかない
元のアンプが低歪みであればあるほど、フィードフォワードを使う意義が薄れる
なかなか現実は厳しいというのが率直なところで、あまり採用例はないようです。
一応、サンスイは製品化したようですね。ただ、単なるフィードフォワードではないようです。
オーディオのイシノラボどっとこむ - 第26回 スーパー・フィードフォワード回路の開発
NFBは原理的に、高域になればなるほど帰還量が減少し、歪みが顕在化します。フィードフォワードはそれより多少高い周波数まで有効に働くので、その改善を期待したようです。
そんな可聴域外のようなところで多少歪み率を下げて、どこまで意味があるのか? は疑問ですが……。サンスイもこの後はフィードフォワードは捨ててBTLに走ってしまいましたし。
実用的にはNFBの方が有効な場面が多いと思いますが、技術的には面白いと思います。