はじめに
たまにネットで見かけるような気もする、半導体素子1つで構成されたヘッドホンアンプのシミュレーションです。
設計
簡単に設計の手順について説明します。
まず回路のトポロジーを決定します。
一石アンプは必然的に抵抗負荷*1A級シングル動作になります。また、アンプにゲインをもたせることは不可能ではないものの、ヘッドホンアンプにゲインはそれほど必要ではなく、そのくせゲインは即NFBリソース(帰還量)の減少に結びついて特性が悪化するため、フォロア動作が実質的には唯一の選択肢になります。
DC結合はまず無理ですから*2、入力と出力にそれぞれコンデンサを入れることにします。ということは正負電源を使う意味はないので、単電源を用いることになります。A級シングル動作にする以上、高い電源電圧は消費電力の増大に繋がるだけですから、電源電圧は極力下げます。
あとは仕様素子の選定をしないといけないのですが、これはパワー素子なら何でも構いません。バイポーラでもMOS-FETでも成立すると思います。入力容量や帰還容量には適当に気を配った方が良いですが、秋月の棚に転がってる一個100円以下のパワー素子でも十分だと思います。
こうなると、あとはもう回路は決まったも同然です。抵抗でバイアスとアイドリング電流を与えてあげればそれで動きます。
定数は一例ですが、回路自体にはほとんど選択肢はありません。
この回路では5V電源を使っています。ACアダプター等を使うことを想定しています。アイドリング電流は片チャンネル100mA弱で、両チャンネル合わせて1W以下の消費電力に抑えることを意図しています。
最大出力が稼げるように最適化している訳ではありません。最大値1.2V程度が限界です。バイアス負荷抵抗の33Ωを下げてアイドリングを3倍程度まで増やせば5Vをほぼ使い切れますが、そこまでする意味は正直あまりないと思います。
スポンサーリンク
シミュレーション
まず周波数特性を見ます。
まあ、特にコメントすることはないというか。平凡な特性です。可聴域はフラットです。
入力と並列に1kΩを入れているので、前につなぐ機器の出力インピーダンスが高いとまずいことになる、ということもありません。というか、そのような出力インピーダンスの高い機器はつなげません。1kΩを省略した場合、出力インピーダンスの高い機器をつなぐと使うFETなどによっては問題が出るかもしれません。
次に最大値1Vの正弦波を入れた場合の、歪のスペクトルを観測します。
意外と悪くないかな? といったところです。悪目に見ても実使用領域での歪み率は0.1~0.5%程度に収まりそうです。これくらいならそのへんの真空管アンプと互角なので、適度なハーモナイザー効果*3が加わって楽しく音楽が聴ける可能性は高いです。
ただ、ケミコンを2発も使う無帰還アンプなので(入力側はバイアス分圧抵抗を思いっきり大きくすればフィルムにできなくはないだろうけど)、その辺で音質に差がつくのをどう考えるかですね。素子の音を聴いているのかケミコンの音を聴いているのかわからなくなりそう。こんなのに高級ケミコン投入しても面白くはないでしょうし。
まとめ
大した性能ではないともいえるし、まあこれくらいなら実用になるとも言えるし、難しいところですね。
遊びで作ってみて、聴いてみると面白いかな? という程度です。
頑張って特性よくしたアンプと優劣がつかなかったりして・・・