はじめに
ソースフォロアのSEPPはパワーアンプの出力段としてメジャーな回路です。しかし、その素性は闇に包まれています。
と大上段に構えてみましたが、この記事では単純にソースフォロアSEPPの出力インピーダンスを動的に見てみようと思います。静的な出力インピーダンスの測定*1は多々行われていますが、これを動的に見る*2試みはあまり見かけません。かなり色々なことを示唆してくれると思うので、ぜひ動的に見てみたいと思います。
目次
スポンサーリンク
シミュレーションの前の検討
出力インピーダンスの代表的な測定方法としては、オンオフ法と電流注入法の2つがあります。オンオフ法は負荷の有無を切り替えて出力インピーダンスを測定します。一方、電流注入法は出力電圧を0Vに固定し、外部から電流源で電流を注入して出力電圧の変動を見ることで出力インピーダンスを測ります。
注入法はシミュレーションで再現するのは簡単ですが、出力を0Vに張り付けて測る必要があるので(本当はそうしなくても測れるような気もしますが)、なんとなく不自然な感じがします。オンオフ法はそのような問題はありませんが、オンオフをシミュレーションでどうやって表現するかが課題です。
今回はオンオフ法を用いることにし、測定対象回路に負荷を繋いだ回路と、無負荷とした回路を同時にシミュレーションしてみることにしました。同じ入力信号を与えて、負荷の有無によって結果がどの程度変わるかを見るわけです。
なお、出力インピーダンスは実は歪みと表裏一体です。もし出力インピーダンス=一定のフォロアがあれば、それは無歪みフォロアとみなせるからです*3。逆に、出力インピーダンスの計測ではどのような歪み方をするかがわかるかもしれません。
シミュレーション
シミュレーション回路を以下の図に示します。
見ての通り、8Ω負荷と無負荷の同じ回路が並んでいます。これによって出力インピーダンスを測ります。
信号源は最大値4Vの1kHzサイン波で、1W程度の出力電力に相当するようにしています。アイドリング電流は130mAで、確実にカットオフします。その際の挙動も見たいので、このような設定にしてみました。
シミュレーション結果です。
赤い線が出力インピーダンス。緑の線(V(o_c))が出力電圧。I(R2)とI(R3)は出力段上下の出力電流です。
出力インピーダンスを一見して気づくのは大きなひげの存在で、0クロスするポイントで発生しています。これに関してはオフセットの絡みで出ているような気もするので、とりあえず保留とします。それほど深刻な問題がある訳ではない気がします。
次に気づくのは正負の非対称性で、出力電圧がマイナスになるタイミングで出力インピーダンスも上昇し、なんと0.1Ωも差が出ています。これは立派な二次歪みを生じることでしょう。
言うまでもありませんが、A級動作とすればこの二次歪みは大幅に改善します。
なんとなく細かい凹凸も見えますが、それについてはノーコメントとします。とりあえず大勢に影響はなさそうだからです。
まとめ
出力インピーダンスが動的に変動することがシミュレーションで確認できました。実際にはこれが出力の歪みに反映されます。
「電圧歪み」として歪み率を考えるのは正攻法だと思いますが、あえて出力インピーダンスとして見ることでまた違った発想が生まれるかもしれないと思います。