オーディオアンプとシミュレーション

主にLTSpiceを使ったオーディオのシミュレーションについて書きます。



出力段パラレル化の効果

 出力段をパラレル化するのと、シングルプッシュプルでたくさんアイドリングを流すのとどちらが良いのか疑問だったので、確認してみます。

シミュレーション回路
シミュレーション回路(歪み測定)

  • 左:通常方式で1A流している回路
  • 右:0.25Aを4つパラにした回路

 1kHz・1VrmsのFFTです。

FFT(1kHz・1Vrms)
FFT(1kHz・1Vrms)

 微妙にパラの方が性能が良いですが、10dB未満の差です。

 電源電圧を上げてピーク値16Vを突っ込みます。

シミュレーション回路(歪み測定・16V)
シミュレーション回路(歪み測定・16V)

FFT(16V)
FFT(16V)

 理由はわかりませんが、パラレル方式は高次の歪みを抑圧できています。この辺で音質の差が生じている可能性があります。

 注入法で出力インピーダンスを見てみます。

出力インピーダンス測定回路
出力インピーダンス測定回路

出力インピーダンス
出力インピーダンス

 パラレル方式は半分以下ですが、gmが小さい領域で使うので1/4にまでは下がりません(1Aずつ流せばそうなるだろうけど)。位相回転が早いのはバッファ段の負荷容量が大きくなるからだと思います(必要に応じて何らかの手当をすることは可能)。

 総評として、確かにパラレル方式の方が性能は若干良いものの、コストに見合った増加があるかというととても微妙、という評価にせざるを得ないと思います。また、今回は素子のばらつきまでは考慮していませんが、それまで込みで考えると実機で性能が勝るかどうかは疑問です(ばらつきは当然性能低下の要因だし、緩和しようとすると相対的にソース/エミッタ抵抗が必要になり不利)。

 あくまでも大出力アンプなどで発熱源を分散させることに意義があり、可能であればシングルプッシュプルを使った方がコスパは良い、ということだと思います。