いつも実感することですが、純A級出力段は本当に優秀です。オーディオアンプの性能は出力段がボトルネックになるという説がありますが、昨今の高gm素子を用いた純A級出力段にはあてはまらないのではないかと思っています。
アイドリング電流は1Aずつがパラレルで合計2A。1素子あたり30W以上の発熱なので現実的にはそろそろ放熱が厳しくなりそうですが、大目に見てください。電源電圧を下げれば出力と引き換えに発熱を減らせますし、なんならA級BTLにすれば出力を維持したまま1素子あたりの発熱を半分にできます。
1Vrms出力ですが、二次歪みのレベルは-110dB未満です。じゅうぶん無帰還で使える特性といえます。
理想オペアンプを使って100%帰還をかけます。
これも実際にやると高周波特性が厳しくなりますが(発振傾向)、シミュレーションでは発振しないので大目に見てください。位相補償はこの記事の趣旨とは関わりがありません。
事実上無歪みになります。
以上のことを総合すると、以下のようなパラダイムが生じてくると言えます。
- 出力段の性能改善は純A級化によって十分成し遂げられる。特別なテクニックは不要。
- 純A級化しても特性が悪いとしたら、足を引っ張っているのは電圧増幅段なので、リニアな電圧増幅のための工夫が必要。
- よって出力段は単に物量を投入すればよく、回路的な工夫は電圧増幅段に要求される。
- ある程度高水準の純A級アンプであれば、音質は出力段より電圧増幅段で決まる(?)。
最後のに関して追加で言うと、同じ電圧増幅段のまま出力段だけを交換しても、純A級出力段同士なら似たような音になるだろう、という仮説です。
これらには経験的に頷ける部分も頷けない部分もありますが、とりあえず1つの指針として覚えておくことにします。