カスコード・ブートストラップ出力段は力技の極みのような手法ですが、割と有望です。
効果がわかりやすいようにフォールデッドカスコードでシミュレーションします。
何回か似たような回路をこのブログにアップロードしたことのある、何も考えていないフォールデッドカスコードです。
ユニティゲイン周波数は2.3MHzくらい。もう少し高めたいとします。
二次歪みは-110dBくらいです。
出力段をカスコード・ブートストラップ化します。
この状態でのオープンループゲイン特性とクローズドループゲイン特性を示します。
ユニティゲイン周波数は7MHzまで伸びています。ただ、今回は位相余裕がなさそうなので追加で位相補償します(そうするためにカスコード・ブートストラップで出力段入力容量を削ったと捉えることにする)。
対アースで挿入した100pFと50Ωが追加の位相補償です。
これでユニティゲイン周波数は5MHz前後です。
歪みはほぼ改善しませんでした。理論的には、非線形性の高い出力段入力容量を減らして代わりに線形のキャパシタを入れたので、歪みが改善するはずなのですが。他の要因で歪みが出ているのでしょう(初段が怪しい)。
今回はフォールデッドカスコードなのであまりご利益が現れませんでしたが、もう少し使いみちがあります。具体的に言うと、出力段で生じるポールを上に持っていけます。
MOS-FET出力段の難点として、大きい入力容量とほぼ必須になるゲート抵抗のためにポールができてしまうという問題があり、これはワイドラーではほぼ確実にネックになります。カスコード・ブートストラップにすれば相当量のキャンセルが可能になるので、NFBをより多くかけられるようになります。
また、付随するメリットして、バイアスを決定する出力素子がカスコードされて低電圧で動作するため、温度補償なども容易になると思います。
課題はやはり安定性(カスコード自体が寄生発振したら無意味)ですね。あとは5Vくらい電圧ロスが生じ、当然電力ロスも生じます。