シミュレーション
まず回路を示します。
前回からの改善点は、
- 初段をカスコード化したら低域の位相の謎回転が直った
- 位相補償を詰めて怪しげなコンデンサを減らした
の2点です。1に関しては理屈はわかるようなわからないような感じですが、結果的にそうなりました。2に関しては、けっきょく3段目ですべて処理することにしました。
位相補償はC1・R20とC5・R19です。前者は三段目の出力インピーダンスが高くなりすぎるとここにポールが生じるので、そうならないようにするのが役割です。後者は出力端から帰還していて、容量的にもメインの位相補償のつもりです。また、ローカル負帰還で出力段の歪みの改善も少し狙っています。
入力に付いているC4はただのローパスフィルタで、なくても動きますが、あると高域で位相が進むことによる微妙なピークを良い感じに打ち消してくれます。また、入力インピーダンスを担保する役割もあります。
ゲインと位相はこんなです。こういうのなんていうんでしたっけ。2ポール補償?
当たり前ですが、ちょっと数字をいじるとすぐ発振します。実機はよほどのベテランじゃないと作れないと思います。
仕上りゲインは見ての通り40dBです。過大な感じもしますが、入力換算の歪みや雑音が減るのでこれはこれでありだと思います。低域ゲインはシミュレーション上180dBもあるので、40dBの仕上りゲインでも十分に負帰還がかかります。逆に低ゲインにする方が難しい回路です(位相補償が)。
C4の有無を切り替えて見た結果。ちょっと1MHz以上で膨らむのが気持ち悪いので、キャンセルしようとしている訳です。
次に、1kHz正弦波で約1Wを出力したときのFFTを示します。これが今回の成果です。
やっぱりすごいですね。見えている高調波はすべて-160dB以下です。主信号が8dBくらいなので、-170dBの歪みです。
初段の負荷を軽くするために3段増幅にする、入力換算の歪み率を下げるためにゲインを上げる、そして進相補償でたっぷりNFBをかける、というコンセプトで挑戦してみましたが、見事成功しているようです。
まとめ
ま、これの問題は実機が作れそうにないことです。のほほんと実装してうまくいく訳がないだろうという、デリケートな回路です。
技術と測定器のある人だけが挑戦を許されます。いつかはやってみたいですね。