はじめに
ここ一週間くらい、デリケートな初段の負荷を軽くしてトータルの性能を稼ぐというコンセプトのアンプについて検討を続けてきたのですが、3段増幅では確かにシミュレーション上は良さそうなものの、現実に実装するのはとても大変そう、という現実に直面しました。
そこで違う方法で同様のことを実現するアプローチについて考えます。
初段の負荷が重くなってしまうのは初段の出力(二段目の入力)で位相補償をするからです。二段目の出力側で位相補償をすれば、理論上大きな問題は生じません。もちろんその分二段目がきつくなりますが、それはNFBで十分カバーできると踏みました(初段の歪みはNFBと相性が悪い)。
ということで、二段目ステップ補償を採用したアンプのシミュレーションをやってみました。
シミュレーション
回路は以下の通りです。
Aを短絡させれば通常方式の位相補償、Bを短絡させれば今回検討する二段目ステップ補償による位相補償になります。
まずはゲインを見てみます。
こちらは見慣れた特性です。
ザ・ラグリードという感じの特性になります。途中までは概ね-12dB/octで下がり、ステップ補償で作ったゼロが効いて-6dB/octになったところで帰還量が1を切るようになります。位相がうねるせいで微妙に高周波が膨らむ特徴があります(これは位相余裕に関わらないので放置してもいいし、気になるなら簡単なローパスフィルタで十分打ち消せます)。
次に、初段と二段目の出力電流を見ます(見ている箇所の関係であまり厳密ではないことに注意)。
だいたい同じようなスケールです。1kHzで-140dBくらいですかね。
このように初段と二段目の電流が乖離します。初段は-180dB前後、二段目は-100dB前後です。
初段の電流には50mHzあたりでなにかよからぬことが起きていますが、ゲート直列抵抗を100Ωにしてみたら綺麗さっぱり消えましたのでシミュレーションはその定数で行います(影響ないだろうけど)。
出力FFTを見ます。1kHz正弦波で約1W出力時のFFTです。
主信号が+8dB、2kHzが-127dBで二次歪みとしては-135dBです。シミュレーション上ではよくもわるくもない数字です(実機なら十分低歪み)。
2kHzが-144dBまで下がり、17dBの改善を実現しました。けっこうよくなっています。
考察
優秀な方式ですねこれ。ミラー効果を使って位相補償するより断然良いんじゃないでしょうか。他にコメントはありません。
ただし負帰還を使わないので、実装の影響はやや大きくなりやすいでしょう。
結論
これは普通に使える方式だと思いました。