通常のオーディオアンプでは出力段の歪みが主な歪みの要因になると言われていますが、歪みが出力段に起因するかどうかは無負荷時と負荷時を比べれば容易に判断できます。
無負荷で歪みが生じていたら、それは電圧増幅段に起因するので、出力段は無関係ということになります。そのようなアンプに対して出力段の歪み低減策を施してもほとんど効果はありません。
出力段のアイドリングを1Aにしている以外はコンベンショナルな回路です。約1Wを出力させ、負荷を8Ωと1kΩで切り替えて出力FFTを見ます。
シミュレーションなのであまりあてにはなりませんが、これから強いて言えば何が導けるか? というと、昨今の高gm素子を用いたA級出力段であれば歪みは事実上無視できる程度であって、必要なのはむしろ電圧増幅段の改良、ということです。
gmが10Sの素子のSEPPで8Ω負荷をドライブすれば、片側あたり16Ωを負担しますからgmは1/160しか効いてこないことになります。gmの非線形成分をどの程度見積もるかは難しいですが、少なくとも数分の1にはなるでしょう。更に対称合成によって偶数次の非線形性は完全ではないにしろ打ち消されます。
出力段だけの0dBアンプでも、数W以下の実用領域で歪み率0.1%は現実的なはずです(ノイズは無視するとして)。
考えさせられるものがあります。