はじめに
準コンプリ出力段は対称性が悪いと言われて久しいですが、MOS-FETでちゃんと設計したものはかなり良好な対称性を発揮します。これは以前の記事でも触れました。
せっかくなのでもう少し追求してみます。
おさらい
以前との記事と同様の内容を掲載します。
上下のドライバ段ソース抵抗50Ω、出力素子駆動抵抗50Ωが一致していることがミソです。
電流波形はよく揃います。
可聴域は問題なし。残念ながら、上下の駆動インピーダンスが揃わないので(上側はFETフォロアの出力インピーダンス分だけ低いインピーダンスで駆動される)、高周波では乖離します。それでも劇的にひどいというほどでもありません。
つまり、こういう定数であれば上側パワー素子の駆動電圧と下側パワー素子の駆動電圧が揃い、特に問題ないことがわかります。
駄目な設計の場合
下側の局所帰還ループのゲインを増やしてみます。
電流波形の対称性が崩れます。
AC特性を見ると下側からかなり乖離しています。
現象としては、下側の局所帰還ループのゲインが増えたことで下側出力インピーダンスが下がり、こちらが多くの電流を食ってしまったということになります。
考察
FETアンプであればゲート電流が(直流的には)流れないため、対称な設計が可能。
バイポーラの場合はベースのインピーダンスが無視できないので、適切に補正する必要があります。補正すればかなりいい線まで行くとは思われます。
まとめ
準コンだからといって対称性が悪いとは言い切れない。
どうしても同極性SEPPを作らないといけない場合、金田式などの上下独立電流ドライブにも十分対抗できる方法です。普通のバッファとして使え、ダーリントンと同等という性質があり、扱いやすいと思います。
また、以前見た柴田式との比較では、
あちらと比べて局所帰還を大きくかけられない点は不利であるものの、回路がシンプルになり高周波で素直な挙動になることが期待されるといったメリットは十分あります。