はじめに
ZDRやD-NFBは怪しい技術だとずっと思っていましたが、ごく単純であることを悟りました。そこで説明を書きます。
簡単なモデル
単純のために0dBアンプを考えます。信号源、理想バッファ、何らかの回路と負荷があるとします。何らかの回路が補正したい誤差成分に相当します。
「何らかの回路」のところに1Vの電池が入ったとします。
こうすると出力に-1Vのオフセットが生じます。対策は? 簡単です。入力を1V嵩上げしてあげれば元通りになります。
これで行けるのなら、差動増幅回路で直接検出して入力に加算してもいいことになります。そうすると1Vの電池に限らず、何が来ても対応できるようになります。
これを使って出力段で生じる誤差を消すのがZDR(D-NFB)ということになります。
現実的な問題点
誤差成分の回路が上の例のように電池であれば入力信号との相関関係はなく、定数を入力に足すだけなので正帰還は一切かからないことになります。
実際は出力段の出力インピーダンス+非線形成分であり、この両端電圧は信号と相関を持ちますから、何らかの形で正帰還がかかります。それでも、正帰還ループのゲインは1よりはるかに小さいので(たとえば0.1Ω相当のZoとして、8Ω負荷で1V入力すると0.012Vの電圧がここに生じる。ゲインは1/81で何ら問題ないレベル)、回路は安定です。ZDRは正帰還で無限大のゲインにしたものをNFBで安定化するという解釈もありますが、あまり正鵠を射ていないと思います。どちらかといえばフィードフォワードに近いものという評価が妥当と思います(ただし主アンプと補正アンプを兼用)。
また、ただの加減算ですから、過剰打ち消しで負性インピーダンスアンプにもできると考えられます。直線性は悪化しますが・・・
それでも正帰還がかかるのは厄介といえば厄介で、理論上無歪み・Zo:0Ωは両立できないはずです。
まとめ
扱いやすい回路だと思いました。出力段の歪が多い回路には向いているでしょう。ただ、誤差検出の精度をどう確保するかが課題になります。